責任者の仕事

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船長(館長)、機長の仕事って何だろう?
小型の船舶や航空機の場合はもちろん操船、操縦が主な仕事なわけだが、
大型の艦船や、航空機の場合は通常の運行はほとんどコンピュータが行っているわけで、
通常の運行で人間の操作が必ずしも必要な訳ではない。
航空機の場合は今でも機長が操縦桿を握っていることが多いだろうが、
最新の機体の場合それは必ずしも必要な操作ではないし、
大型船舶(特に軍艦)の場合は船長が操舵輪やスロットルを操作することは昔から無い。
鉄道に至っては無人で運行している物が既にあるし、
新幹線なども技術的には無人での運用は可能なはずである。
航空機や、船舶も技術的には可能なわけで、実際軍用機にはすでに無人機が存在する。

大型船の船長と言うのはたぶん実に退屈な仕事であると思う。
港に出入りする際にはパイロット(水先案内人)が乗り込んでくるし、
外洋での運行は航海士の仕事である。
豪華客船の場合は晩餐会を主催したり、客の相手をしたり、色々と仕事はあるだろうし、
軍艦の場合は戦闘の指揮も執らないといけないので結構忙しいだろう。
・・・と、どちらも船の運航とは直接関係ないですね。
貨物船に至っては何かすることがあるんだろうか?

では、船長(艦長)の一番重要な仕事は何か?
私が思うに(私が思うまでも無いのだが・・・)、
緊急時の決断が最も重要な仕事のはずである。

その昔、まだジャンボ機が登場する前の話だからかれこれ40年以上前の話だが、
ひどい濃霧で羽田への着陸をあきらめて福岡へダイバートしたホノルル発の便があった。
当然乗客は怒るわけで、機内では客室乗務員が対応に追われたことは想像に難くない。
この時、着陸できたのではないかという副操縦士に、
「臆病者と言われる勇気を持て」というような事を機内で機長が言ったという話を聞いたことがある。
直接聞いたわけではないので、真相のほどは確かではないが、
人の命を預かる責任者が発した言葉だとすれば実に重みがある。
そして、機長を罵倒していた乗客達が福岡で最初にみた物は、
その便の直後に羽田への着陸に失敗して
滑走路上で炎上している航空機を写しているニュースであったそうな・・・
航空機の場合は、地上に降ろさなければ救援も何もできない。
定刻での到着をあきらめ天候の回復を待つ、
目的地への到着をあきらめ他へダイバートする
通常の着陸をあきらめ胴体着陸する、
空港への着陸をあきらめ・・・・
機長に課せられた最大の仕事はあきらめる決断をすることでは無いだろうか。

沈みそうな船で船長がしなければならないのも、やはりあきらめる決断であると思う。
自力でも接岸をあきらめ救援を呼ぶ、
船をあきらめて退船命令を出す・・・

あきらめるという決断は責任者にしかできない。
揺れて水が入った船なら、一生賢明掻き出せば助かる可能性はあるが、
穴が開いて沈み始めた船は自力では助からない。
まだ、浮いているうちに救援を求め、船から降りるしかない。
その決断をいつするか、それが責任者の最後の仕事である。

船や、飛行機に限った話ではない。
登山でも引き返すのが一番難しい・・・

自分が一生懸命やってきたことを諦めるのは辛いと思う。
でも、取り返しが付かなくなる前に諦められるのが賢者ではなかろうか?

間違いを認められずにどこまでも坂道を転げ落ちる愚か者にはなりたく無いものである。
手遅れか(笑)

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